ホームスクーリングを検討するとき、義務教育は出席扱いになるのか、子どもの進学に不利にならないのか、心配はつきませんよね。
日本とは制度が異なるオーストラリアのホームスクーリングの成功のカギは、オーストラリアの制度をよく知ること!
この記事では、オーストラリアの教育制度の基本と、ホームスクーリングがその教育制度にどのように適応されるのかを詳しくお話します。
オーストラリアの義務教育
オーストラリアの義務教育はホームスクーリングでもできるの?
基本的に法で認識された教育方法になってるよ。
オーストラリアでは、ホームスクーリングは教育制度として法的に認められています。そのため、各州によって若干の違いはありますが、家庭学習が義務教育として認定されるための基準と手続きがあります。
ホームスクーリングを行う場合でも、小中学校の義務教育の要件は変わりません。ホームスクーリングを始める前に、まずオーストラリアの義務教育について理解しておきましょう。
ホームスクーリングでも、小学校と中学校(Year11まで)は義務教育には変わりないよ。
義務教育の開始年齢
オーストラリアでは、州によって義務教育の年齢が異なります。たとえば、私が住むニューサウスウェールズ州(NSW)では、6歳から小学校の義務教育が始まりますが、西オーストラリア州(WA)では5.5歳からと定められています。
以下に各州の義務教育開始年齢と終了年齢をまとめました。
州・地域 | 義務教育開始年齢 | 義務教育終了年齢 |
ニューサウスウェールズ州 (NSW) | 6歳 | 17歳 |
ビクトリア州 (VIC) | 6歳 | 17歳 |
クイーンズランド州 (QLD) | 6歳 | 17歳 |
西オーストラリア州 (WA) | 5.5歳 | 17.5歳~18歳 |
南オーストラリア州 (SA) | 6歳 | 17歳 |
タスマニア州 (TAS) | 5歳 | 18歳 |
オーストラリア首都特別地域 (ACT) | 6歳 | 17歳 |
ノーザンテリトリー (NT) | 6歳 | 17歳 |
日本では小学校の義務教育の開始年齢や、終了年齢は全国共通ですので、州によって異なるのは少し戸惑うかもしれませんが、自分が住んでいる州の事だけ理解しておけば問題ありません。
例えばNSW州は子供が7月31日までに6歳になる年に小学校の義務教育が開始しますが、TAS州は1年早く、5歳になる年からのスタートになります。
州で定められている義務教育の開始年齢の規定に沿って、ホームスクーリングの準備も進めていくようにしましょう。
義務教育終了年齢にも注意!
義務教育の修了年齢も州によって異なり、オーストラリアでは17歳または18歳です。これは日本の中学校3年生(15歳)までの義務教育と比較すると長い期間になります。オーストラリアでは、17歳は11年生に相当し、この年齢までが義務教育に当たります。
例えばNSW州では、高校10年生(15歳)で学校教育を終える生徒も多いですが、法律上は満17歳になるまでは、フルタイムの仕事、アプレンティス(見習い)、TAFE(職業訓練所)への通学など、何らかの教育活動に従事していることが必要です。
特に高校生のホームスクーリングを検討している場合は、この点に注意して計画を立てる必要があります。
オーストラリアでは州ごとに様々な規則が異なるため、ホームスクーリングに関する情報を調べる際は、必ずあなたが住んでいる州のルールをご確認くださいね。
ホームスクーリングの基本知識
オーストラリアでは、ホームスクーリングは正式な教育制度として法的に認められています。ホームスクーリングを選択する家庭は学校から独立して教育を行うことが可能です。
しかしながら、合法でホームスクーリング教育をするには、在住している州の教育当局にホームスクーリングの登録をする必要があります。
ホームスクーリングに登録しないとどうなるの?
登録しないと違法になってしまうから気を付けて!
登録を怠ってホームスクーリングをしてしまうと、違法になってしまい、教育省や自治体から法的な措置を受ける可能性があります。また、登録していないと、学校教育と同等の教育を受けていないとみなされ、将来的に子供が高等教育や職業に進む際に影響を受ける可能性があるので注意が必要です。
国や政府からの支援も受けられなくなってしまうので、しっかり登録しましょう。
国や政府の支援についてはこちらの記事に詳しく書いてあります。
各州のホームスクーリングの規定は各ウェブサイトから確認できます。
教育基準に従う
オーストラリアでのホームスクーリングは、各州の教育省が定めるシラバスに基づいて行われます。これは、家庭教育が州の教育基準に沿って進められることを保証するためです。ただし、学校のように年度ごとのシラバスを厳格に完了させる必要はありません。ホームスクーリングでは、子供一人ひとりの学習スピードや能力に合わせて教育を進めることが可能で、子供の個々の学習ニーズに対応する柔軟性を提供します。
特別支援
特別な学習ニーズを持つ子どもをホームスクーリングする場合、Isolated children Schemeが適応される場合があるようです。Isolated children schemeの詳しい内容はこちらの記事から。
また、追加のサポートやリソースが提供されることがあるようです。お住いの州政府のウェブサイトをご参照くださいね。
オーストラリアのホームスクーリングの出席扱いと卒業資格
オーストラリアのホームスクーリングは出席扱いされるの?
学校とは独立しているから、出席日数を求められることはないの。親が学習の記録を取って、それが出席記録になるのよ。
ホームスクーリングを選択した場合、オーストラリアの教育制度ではどのような出席扱いとなるのか、また卒業資格はどのように取得できるのかは、私たち保護者にとって重要な疑問ですよね。ここでは、ホームスクーリング時の出席記録の扱いや卒業資格の取得方法について、具体的に解説します。
学校との連携とサポート体制
日本のホームスクーリングとは異なり、オーストラリアではホームスクールを始めるときは、生徒は通常学校を退学します。そのため学校とホームスクーリングを行う家庭との間に直接的な連携はありません。よって、学校の出席率に関する要求は適用されません。
しかし、州によっては完全に独立するわけではなく、パートタイムホームスクーリングを認めている州もあります(VIC州、TAS州)。この場合は、生徒は特定の授業(例えば体育のみ)を学校で受けることが可能です。
NSW州ではまれに特定の条件下でパートタイムホームスクーリングが認められる場合があるようですが、基本的には認められていません。よって、NSW州のホームスクーリングは学校とは完全に独立した教育になります。ただし、NAPLAN(オーストラリアの学力テスト3年生・5年生・7年生・9年生で実施)は受験料を払って地元の学校で受けることができます。
我が家の次女も、今年3年生になるので、3月(2024年)に予定されているNAPPLANを地元の学校で受講します!
出席の記録と学校認定
オーストラリアにおいてホームスクーリングは、正規の学校教育と同等に扱われます。出席記録は保護者が作成した教育計画と子供の学習の記録に基づいて記録されます。これにより、ホームスクーリングでも正式な学校教育と同様の扱いを受けることができます。
卒業資格はもらえる?
- 小学校卒業資格
教育省(NSW州ならNESA)にホームスクーリングの登録をして学習の記録があれば、小学校はほぼ問題なく卒業し、中学校(7年生)を始めることができます。
NSW州では一般的に7年生になるときは、もう一度学習計画書を提出して、面接をする形になるようです。
我が家の長女も6年生を終える前に、次の2年分の学習計画書を提出し面接しました。
- 中学校・高校(High school)の卒業資格
オーストラリアには中学校と高校と言う概念はありません。小学校を卒業すると7年生になりハイスクールと呼ばれる中高一貫の学校になります。
Year 10 (10年生)を終えるともらえる証明証(Certificate of Completion of Year 10)は政府のウェブサイトから申請して、貰うことができます。
NSW州では12年生が終わると、HSC(Higher school certificate)がもらえます。いわゆる高校終了証ですね。ホームスクーラーはこれを貰うことができませんが、大学へ進学する道が閉ざされているわけでは決してありません。
ホームスクールでハイスクールまで終えた子はどうやったら大学に入れるの?
大学への道は実はいくつか選択肢があるよ。小学校からハイスクールへの進学も踏まえて詳しくお話します。
オーストラリアのホームスクーリングは進学はできる?
結論からいうと、ホームスクーリングを行った子どもでも高校や大学進学は、学校に通う学生同様に出来ます。
ここでは、ホームスクーリングからの進学への仕組みと、実際に進学した事例や体験談をご紹介します。
ホームスクーラーの進学の仕組み
- 小学校から中学校・高校 (ハイスクール)への進学
小学校はホームスクーリングをしていたけど、中学校(ハイスクール)からは学校に通う、と言う形をとるホームスクーラーは多いです。この場合も、教育省にホームスクーリングの登録がしてあれば、問題なくハイスクールに入学することができます。
私立や州立の選抜校になると、ホームスクールか否かに関係なく面接があったり試験があるところがあります。また、奨学金(Scholarship)に申請するときは、過去のNAPLAN(国の学力テスト)の結果の提出を求められる事があるので、中学校から私立の学校に通わせることを考えているのであれば、小学校5年生の時に行われるNAPLANを地元の学校で受けるのが良いでしょう。
- 高校から大学への進学
オーストラリアには大学受験と言うものがありません。
高校から大学へ進学するには、一般的には高校在学中にHSC(Higher school certificate)の試験を受け、その結果がATAR(Australian Tertiary Admission Rank)の点数になり、その点数で大学に行くという形になります。
ホームスクーラーの大学進学を目指すときには以下の方法があります。
- 大学の非学位コース
基礎学習、準備コース、ディプロマなどのコースです。このコースを修了すると、大学は特定の学位コースへの入学を保証することがあります。この場合、非学位コースで行った一部の学習については単位を認定されることもあります。 - 大学準備コース
大学準備コースは、12年生を修了していない、または今年12年生を受けていない応募者のために設計されています。ほとんどの大学は大学準備コースを考慮するようですが、希望する大学に確認することを強く推奨します.。
参照元:Universites Admissions centre - TAFEコース
TAFEコース – 多様なCert III、Cert IV(Cert IVは通常、HSCに相当し、ディプロマは通常、大学1年生に相当し、学位の最初の年の先行学習として認められることがあります)
参照元:Design your homeschool (What about HSC ans University?) - オープン ユニバーシティ(Open University Australia)
オープンユニバーシティは、オンライン教育を提供する機関で、様々な大学のコースやプログラムをオンラインで受講することができます。ほとんどのコースでは入学要件が設けられておらず、中には13歳から可能なコースもあります。この制度を使って、2-4教科の単位を取り、それを持って入学したい大学へ編入することが可能です。
参照元:Fearless Homeschool(Open Universities for Homeschoolers)
*希望する大学への確認を推奨します。 - ポートフォリオ/オーディション
芸術やデザインの学位への入学を希望する学生は、自分の作品を集めたポートフォリオを作成し提出します。
音楽や演劇のプログラムを希望する学生は、オーディションを通じて自分のパフォーマンス能力を示します。
参照元:Fearless Homeschool (Portfolio/ Audition Entry to University) - STAT試験(Standard Tertiary Admissions Test)
高校卒業資格や大学の入学の点数に足りなかった場合に利用されるテストです。通常の学力試験的内容ではなく、クリティカルシンキングや分析などのスキルを計るテストです。
受験者の最低年齢は通常18歳。
全ての大学がSTAT試験の結果を考慮するわけではないので、希望する大学の受け入れ条件を事前に確認しましょう。
参照元:Fearless Homeschool (Standard Tertiary Admissions(STAT) Test)
このように、一般の高校を卒業していなくても、大学への進学の道はたくさんあります。TAFEやオープンユニバーシティは入学条件が低く、高校(ハイスクール)の勉強をしながら受けることも可能です。この制度を利用して、ホームスクーラーが通常の高校を卒業する年齢より早く大学に入学している事例も多くあります。
ホームスクーラーの進学事例と体験談
- オーストラリアのホームスクーラーの大学進学事例
Fearless Homeschoolのウェブサイトに実際の進学の体験談が紹介されていたので、いくつか紹介します。
“ガブリエルは16歳で、独立したプロバイダーを通じて医療管理のCertificate IIIをオンラインで完了しました。その後、看護学士の勉強を申し込み、5つの大学から入学のオファーを受けました。”
“リアムは16歳の時、QLD TAFEでコミュニケーション/マーケティング/ビジネスのトリプルディプロマに学部長の面接を経て受け入れられました。ディプロマを完了した後、ビジネス学士の2年次への進学オファーを受けました(1年次はディプロマで単位認定されました)が、自身のビジネスを運営することを選びました。”“イミは16歳でマッサージのCertificate IIIを取得し、19歳でCertificate IV、21歳でディプロマを続けて取得しました。この間、いくつかのビジネスコースを受講し、働きながら学んできました。現在23歳で理学療法の学士を学んでいます。”
引用:Fearless Homeschool(Real-life examples)
Chatgptによる翻訳
ホームスクーリングから進学した我が家の体験談
我が家の長女は7年生までホームスクーリングをしていましたが、8年生から全寮制の中学校(High school)に入りました。その際、試験などはなく、過去2年ほどの学習の記録(私の手作り)と、ちょっとした面接をしただけで、入学許可を得ることができ、ホームスクーリングをしていたことは少しも問題になりませんでした。
まとめ
オーストラリアのホームスクーリングは法的に認められた教育の形態です。
登録すべきところに登録して、保護者が学習の記録をとっていればホームスクーリングをする子供たちは、通常の学校に通う子供たちと同様の選択肢があります。
また、TAFEやOpen universityなどの教育制度を利用することで、より早く、簡単に大学に進学することも可能です。
オーストラリアのホームスクーリングへの教育制度はとても理にかなった制度ですね。
「ホームスクーリングに興味があるけど、子供の将来が心配」と思っている親御さんのお役に少しでも立てたら嬉しいです。
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